アーキテクチャを考える(1)
2008年 9 月 10日
【鎌田博樹 (本誌編集長) 】 来週開催のModeling Forum 2008のパネル「情報システムアーキテクチャに望むもの」(17日)に出させていただくことになった。最近、モデル駆動システム工学に関する各国動向のレポートを書いていた関係で、多種多様なアーキテクチャについて主観的には膨大な資料を集め、これまでとは違う視点で考える機会を得た。パネルの問題提起を兼ねて、ここで整理してみたい。
拡大する「アーキテクチャ」
アーキテクチャは、大きなシステム、つまり多くのサブシステムから成る大規模なシステムを扱う(開発・運用・保守・拡張・移行…する)際に必要となる、システムの概念的な構造と機能的振舞いを意味する。コンピュータにおいて”system architecture”という言葉を使ったのは、IBMのF.ブルックスらが1959年、IBM 7030の開発の際のレポートで、それまでの”machine organization”に替えて使用したのが最初とされる。ソフトウェアへの適用も、有名なE.ダイクストラの研究(1968)で始まった。コンピュータも、建築のように「機能・構造・美」を総合する概念が必要な段階に達したということだろう。
しかし、ソフトウェアの分野で実用使されるようになったのは比較的新しく(1980年代)またコンセンサスも十分ではない。「抽象化と問題の分割」によって複雑性を減らし、システムを管理可能にするという大枠では一致するものの、ステークホルダーが増加し、構成システムが安定せず、ますます大規模・複雑化して一種の複雑系としての環境化しつつあるソフトウェアでは、複雑性の増加によって使われるアーキテクチャもどんどん増えていく。企業や事業(エンタープライズ)の全体を問題にすれば、アーキテクチャを整理するためのフレームワーク(アーキテクチャフレームワーク)も必要になっている。これは一種の「アーキテクチャのアーキテクチャ」といえよう。
「ITアーキテクト」を志していた技術者は、ITプラットフォームのアーキテクチャだけでは「エンタープライズシステム」には不十分であることを知らされるわけだ。しかしここまでくると、ほとんどの人にとって、日常の仕事の範囲からは大きくはみ出てしまう。困ったことに、エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)を考えるほどグローバルな視点を持つような知識と経験を積んだ人間は、日本にはほとんどいない。大学でも教えていない。官庁を中心に、EAが一種の流行になりながら、具体的なアクションに結びつなかかったのは、「エンタープライズ」の目標や課題、方向性についての戦略が明快に定義されず、また異分野で共有・利用されるべき「情報」を、そうした目的に沿った形で組織化する細部が徹底されなかったからだろう。尋常でない執念を持った人間も必要だ。(続く)
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