「グリーン」は製造業=ITの救世主となる。たぶん

2008年 12 月 22日

なぜ「グリーン」か:緑色はドルの色

オバマ次期大統領には、人を楽観的にさせる能力があると言われている。しかし逆境にあって楽観的になる能力は、もともと移民=難民の国であるアメリカ人の国民性でもある(ますます“悲壮”になる日本人と対照的)。次期政権の政策の柱でもあり、輝きを増しているのは”Green”というキーワードで、いまITを中心に、ほとんどあらゆる種類のメディアに登場しない日はない。理由を考えてみると、ざっと以下のようなところだと思われる。きりがいいところで「7大原因」としておく。

  • ゴア前副大統領のキャンペーンによる国民的関心
  • 石油(ガソリン)価格急騰の悪夢による脱石油への意識
  • エネルギー効率改善が企業の利益の源泉となりうる
  • IT(サーバやPC)の資源浪費性への反省
  • ITによるトータルなプロセス管理・最適化の市場としての関心の高まり
  • 産業と社会のすべてに関わり、効率化を進めれば雇用を創造できる
  • 財政による「景気浮揚」といった後ろ向きのイメージがない

重要なことは、別に環境保護という価値観からだけ「グリーン」を問題にしているわけではなく、実利とペア(俗に言う「欲と二人連れ」)になっていることだ。これは悪いことではない、どころか素晴らしいことで、そうあってこそリアルになる。米国人の「グリーン」を斜に構えてみていた人(何を隠そう筆者もその一人)は考えを改めたほうがいい。IBMがなぜ「グリーン」をあれほど強調するのか。それは、経済・社会がもとめる新しいITのキーワードがそこにあるからだ。つまり「グリーンは儲かる」のだ。ちなみに米国でグリーンは、ドル紙幣をイメージさせる色でもある。

グリーンは環境技術というより、プロセス管理技術

北米の製造業の経営幹部を対象とした調査(Eye For Transport*)では、じつに95%が、自社において “Green Manufacturing Project” は増加・拡大すると答えており、43%は品質向上と効率改善によって業績改善に寄与すると考えている。約半数は、エネルギー管理プロジェクトに最も関心を持っている。省資源技術は日本にもある。世界最高水準だ、と言う人もいる。そうかもしれない。しかし、技術はそれを生かせるビジネスモデルと組み合わされてはじめてイノベーションを実現するが、日本ではまだそうしたものは聞かないし、政府がイニシアティブをとっているわけでもない。グリーンと従来の環境技術との違いは、それが総合的なプロセス管理技術だというところにある。

たとえば、リサイクルを考えてみよう。「廃棄物」と「資源」の違いは、処理技術や流通システムによる相対的なものでしかない。廃棄物を効率よく処理する技術、廃棄物から資源を取り出す技術、廃棄物を廃棄物としない技術の3種類を比較したときに、個々の技術の優劣は意味がなく、ただシステムとして成立するかどうかにかかっている。ハイテクであってもなくても、効率よくリサイクルできる技術がよい技術(テクノロジー)なのだ。それはもともとの製品設計にかかってくるし、行政の対応にも依存する。米国の関係者が注目しているのは、個々の「技術」ではなく、システムとオペレーションである。どんな技術が役に立つかはシステムによる。日本は役に立つ技術で評価されるだろうが、せっかくなら役に立たせる方法でも評価されたいものだ。付加価値は100倍以上も違いそうだからだ。

テクノロジーとは、ある目的を達成するために科学的知識と工学(エンジニアリング)を組合せるメタ技術である。「技術立国」にしては圧倒的に「文系」が多い日本の大企業経営者がなかなか理解できないのはこの点だ。彼らはビジネスの目的(売上と利益)と手段(技術)が単純に対応すると思っているが、これがうまく噛み合うには、価値を実現するビジネスモデルと、個々の技術を総合したテクノロジーの両方が必要になる。SOAやBPMはそれを同期させる技術で、経営とITを一貫させる戦略がなければ、絵に描いた餅にもならない。

グリーンな技術としてのプロダクトライフサイクル管理

ZDNetでGreenTechを担当するジャーナリスト、ヘザー・クランシー(Heather Clancy)が注目するシステム技術は、プロダクトライフサイクル管理(PLM)である**。この分野のベンダーPTC社は、最近Synapsis Technologyという企業を買収し、個々の製品に使われる素材が、有害物質などに関する各国の規制基準を満たしているかどうかを追跡できるという。シナプシス社の顧客には、シスコやGE、IBM、モトローラ、ソニー・エリクソンなどが含まれる。もちろん、このアプリケーションは、有害物規制だけでなく、リサイクル、エネルギー消費など、企業活動と社会との接点における関心(concern)ごとに必要な情報を可視化し、最適な判断をサポートしてくれる。たんに規制を遵守するという消極的なものではなく、先取り的な対応も可能となるだろう。

オバマ次期政権は、2年間で総額90兆円以上の経済再生プログラムを準備しているという。それはグリーン・テクノロジーと高速インターネット基盤、自動車、道路などすべてを含んだものだ。財源はどこにあるか? それはまず、価値を実現する米国人の創造性であり、もちろん当面の税収ではない。財源はどこにあるか? それは現在のエネルギー消費だ。米国はGDPを100万ドル稼ぐのに250トンあまりの一次エネルギーを消費している(2001年の数字。日本は92トン)。半分にできれば、財源とすれば十分すぎるではないか。ついでに中東へのエネルギー依存度を減らせば、それだけ戦争費用や軍事費も安くて済む。これだけで数千兆円の潜在財源となるだろう。雇用が生まれれば放っておいても税収は増える。そうした価値を実現するのは、単一の技術ではない。グリーンなビジネスモデルでありグリーン・テクノロジーだ。

経済や政治とは、基本的に資源配分にかかわるもので、テクノロジーはその方向性に対して対応していく。ブッシュ政権下がそうだったように、戦争と金融にフォーカスすれば、テクノロジーも軍事や怪しげなデリバティブが中心となる。オバマは、グリーンと製造、そして国内再投資にフォーカスしようとしている。うまくいけば、それが生産性を高め、雇用を生む。そのために最も優秀な人材を適所に配置したと評価されている。米国再生への世界戦略としてきわめて至当であり、投資が適切に使われるならば、確実に回収は可能だろう。 (12/22/2008)

参考資料:

** Product lifecycle management could get boost from green manufacturing initiatives, Heather Clancy, ZDNet, 12/21/2008

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One Response to “「グリーン」は製造業=ITの救世主となる。たぶん”

  1. グリーン・テクノロジーと新しい産業革命への期待 | INTELOGUE on 2008年 12 月 23日 1:24 AM

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