創刊コンセプト


モデル駆動エンジニアリング(MDE)パラダイムを推進する
工学的解決のためのテクニカルインテリジェンス・アドバイザー

『オブジェクトレポート』とは?

「オブジェクトレポート」は、弊社の前身である(株)創研プランニングから発行されていた月刊ニューズレターで(1992-2002年)、開発技術、プラットフォーム技術を中心にハイレベルの技術・市場動向をレポートしていました。新たに復刊される「オブジェクトレポート」は、ITという境界を越え、モデル駆動エンジニアリング(MDE)というパラダイムを、ビジネスおよび製造を中心とした産業社会システムの工学的な改善に応用するための技術的情報をお届けするとともに、Webにおいて爆発的に増加している多種多様な情報を意味的に構造化、ネットワーク化し、読者の皆様の問題解決と技術的な意思決定をサポートすることを目ざしています。創刊=復刊の意図は以下の4点に集約されます。

  1. 日本の産業的・政策的課題に応える技術指針
  2. 客観的な問題提起・評価分析・明快な論理性
  3. 複眼的な情報分析:知識化=ネットワーク化
  4. 知識メディアとしてのWebの可能性を追求

MDEマニフェスト - 「オブジェクト・レポート」創刊にあたって(PDF)


コンセプト

テクニカルインテリジェンスとは、問題の工学的解決に役立つ<技術+知識>情報を意味します。たんなる技術情報ではなく、問題の構造的分析と理解、技術の可能性、到達点と限界、目的を達成するための代替的戦略の提案などを含むものと言うことができます。

工学的解決とは、ビジネスや政策、研究、教育、医療など、多くの当事者が関わり、技術的手段を必要とする複雑な課題にたいし、ソリューションの設計と開発、配備/試験、運用、評価などのプロセスを含むライフサイクルアプローチを適用して<結果の最適化>を図ることです。

エンジニアリングは、ほとんどの場合リエンジニアリングのプロジェクトとなります。つまり既存のプロセス、技術、組織、資源配分などの見直しと再構成を伴うもので、当事者が問題の構造を共有し、解決について合意しない限り、プロジェクトの成功は難しくなります。

モデル駆動エンジニアリング(MDE)とは、問題の発見から計画・開発・運用を含むエンジニアリングのライフサイクル全体を通じ、モデルを主要な構成単位としてシステム工学的に利用する方法論、あるいはそれを意識した工学的な実践を意味するものです。

情報の意味的な構造化は、情報のコンテクスト(5W1H)を限定することで、ユーザーにとっての情報の重要性、有用性を高めるもので、工学的解決のように多数の当事者が関わるプロジェクトのコミュニケーションに不可欠な<共観性>を創造する前提となります。

テクニカルインテリジェンスは、<対話>を通じて生まれ、<集合智>へと発展していくものです。対話は、共通の価値、共通の理解、互いの立場の尊重を前提とした、きわめて人間的な行為で、システムやインタフェースはそれを援けられますが、それを成就するのは参加者です。

内容構成

  • EDITORIAL(問題提起/状況分析と提言)
  • NEWS(国内/海外ニュースと解説・関連情報源、Web情報リンク)
  • REPORT(技術・市場動向と分析・関連情報源)
  • TUTORIAL(新技術入門)
  • CONTRIBUTION (寄稿=ゲスト論文、提携誌論文翻訳)
  • DOCUMENT ARCHIVE(技術資料、仕様書等翻訳)
  • COLUMN (コラム、書評、意見等)
  • SPONSORED FORUM (企業のインテリジェンス/技術情報)
  • INFORMATION(イベント、出版等)
  • キーワード・インデックス

編集長メッセージ

オブジェクトレポート編集長兼発行人
鎌田 博樹

情報通信技術を対象としたInfoLink (1985-87)、ドキュメント技術のEP Report (1989-2000)、そしてオブジェクト技術のObject Report (1992-2002)と、筆者は20年間に3つのニューズレターに携わったことがあります。今回は、モデル駆動エンジニアリング(MDE)という、メタ工学をテーマにしての再挑戦です。中身については読んでいただくとして、ここでは、新オブジェクトレポートの形式や位置づけについて、特に強調したい点をお話したいと思います。

ニューズレターというのは、アナリストやウォッチャーが発行する「読者への手紙」式の定期刊行物で、誇張や宣伝、格式、無用な親切といったメディアの形式性を取り去り、特定テーマのインテリジェンスを必要とする読者に向けて書かれるというスタイルで、ニュース(分析)、アドバイス、コラム、分析レポートなどを提供します。誇張はいけませんがユーモアや風刺は歓迎され、有名な『悪魔の辞典』の著者、アンブローズ・ビアスも『ニューズレター』という名の経済週刊誌でコラムを書いていました。

「己の欲せざるところ、人に施すなかれ」は座右の銘ですが、情報はやはり自分が読んでもおもしろく、役に立つというのが基本だと思います。編集に携わるものとして、寄稿者、読者、協力者とともに考えていくべき問題を提供し続けていきたいというのが、最大の期待です。過去3つのニューズレターは、いずれも、新しい総合的なIT技術が絡む意思決定をする立場の人々(ユーザーとベンダー)が必要とする情報を提供することを目指し、一定の評価を得ていました。本誌もそうした姿勢を継承していきます。

筆者は紙に印刷されたものを読むのが好きです。紙はそのコストと手間にもかかわらず(否、だからこそ)高い可読性と情報量を盛り込むことが出来ます。何よりも証拠性があり、電波・電子メディアの場合ように垂流しの無責任に陥らない、製作者への戒めにもなります。とはいえ、電子媒体のメリットも活用しないわけには行きません。ということで、基本的にはPDF(希望者には印刷版を郵送)という折衷的な形で提供し、検索・表示の自在性、読者との対話性というWebメディアの機能を使ったサイトを別に構築していくという2段構えをとることにしました。MDEは対話を通じた合意形成と集合智の創造の環境ですが、Webでしかできないこの環境については、またあらためてご説明したいと思います。

情報サービスもビジネスであり、広告料と購読料をめぐってさまざまなビジネスモデルがありえます。本誌は、広告の情報的価値を認めますが、中途半端な記事や、隠れ広告の類がメディアに氾濫している中で、小なりといえども、あえて古典的な”ジャーナリズム”としての中立性を標榜したいと思います。ジャーナリズムは(あるべき)社会のためにはたらくものです。メディアはまず読者に評価され、支えられ、そのことによって広告媒体として評価していただくのが筋だと思うからです。媒体と広告との連携と分離は、Webメディアであれば可能です。

本誌のタイトルロゴの背景に選んだのは、オスマン帝国とスペインを中心とした欧州連合軍がギリシャ沖で激突したレパント海戦の図です。歴史教科書にもある有名な大海戦は、周知のように後者の圧勝に終わり、世界史は時間をかけながらも大きく転換していくことになります。重要なことは、これが技術史の転換点と重なり、造船、火器などの個別技術と、作戦、指揮、戦闘管理などの運用力の両面で勝る欧州が、海戦の「システム技術」を着実に進化させて、産業革命を準備していったということです。

筆者は技術史が好きですが、人類の技術の発展をリードしてきたのは、残念なことですが戦争の技術でした。軍事技術には技術のすべての要素が詰まっています。人間が生き残りのために知恵と力を総動員して組み立てる計画と実行、そして結果には、客観的に評価してさまざまな分野に応用できる技術や教訓の宝庫といえます。レパントで圧勝したスペイン無敵艦隊を葬ったのは、さらに新しい技術と戦術思想のもとに鍛え上げられた海軍を築いた英国でした。

戦争は残酷なものですが、グローバルな競争下にあるビジネスもますます戦争と似てきました。個々の人間や組織の汗と努力も、優れた製品やサービスも、<全体最適>が果たせなければ灰燼に帰すことがあります。本誌は、勝者が全部を獲る”ゼロサム・ゲーム”ではなく、「自利利他、公私一如」の日本的道徳・価値観を復興させるために、可能な限りはたらいてみたいと思います。MDEは勝者のためのものではなく、社会のため、世界のためのものであるべきだと考えます。
皆様のご支援ご指導をひとえにお願い申し上げるしだいです。

2007年6月1日
鎌田 博樹