MODEL DRIVEN ENGINEERING


モデル駆動エンジニアリング(MDE)について:ITパラダイムを超えて

モデル駆動エンジニアリング(MDE)とは、問題の発見から計画・開発・運用を含むエンジニアリングのライフサイクル全体を通じ、モデルを主要な構成単位としてシステム工学的に利用する方法論、あるいはそれを意識した工学的な実践を意味するものです。

モデルには、気象モデルや経済モデルのように、対象となるものごとの必要な側面を抽象化した模型モデルと、プラモデルやファッションモデルのように、そこから対象となるものごとを創造する原型モデルがあります。MDEは模型と原型の2種類のモデルを使い、対象を模型で再現するとともに、原型となる設計から実体(実装)をつくりだし、同時につくられたシステムの最適化のためのコントロールも、モデルを使って行おうというものです。

模型と原型を使うこうしたアプローチは、太古の昔からあり、技術の歴史はモデルを使うことによって進化してきたといっても過言ではありません。建築の耐震設計や自動車の空力設計などは、実物に近いモデルを使ったものから、ソフトウェア上のモデルを使ったものへと進化し、それによって設計期間の短縮と精度・効率の向上が達成されたことはよく知られています。MDEとは、組織や資源の運用など、ものづくり以外の要素を含めた問題に対してもモデルの利用による工学的な解決を目指しています。


たとえば、自動車や携帯などの新製品開発プロジェクトを成功させるためには、生産管理など「ものづくり」以外に、サプライチェーン、マーケティング、サービスなどを有効に組合せる必要があります。良い製品を提供することは重要ですが、「良い」という価値判断を含むものの場合は、誰にとって、何のために、どのように、いつ、といったコンテクストが明確になっていないと、何の意味も持たないことになりかねません。組織が行う活動は、何らかの問題を解決するために行われますが、多種多様な当事者が関わって、時間をかけて行う活動は、ともすれば本来の目的-目標を見失いがちです。それを何とかするのが「マネジメント」ですが、活動があまりに複雑になり、またあまりに環境変動が急激な現代では、カリスマ的経営者でも長期の成功は難しいと言わねばなりません。
IT技術は、まさに複雑なマネジメントを支援するために発展してきました。マネジメントのさまざまな側面を「××管理」として抽出し、ベストプラクティスを想定した管理システム(xMS)を対応させるというやり方で、無数のxMSを3文字略語、4文字略語を冠して続々と送り出しています。IT業界関係者でもすべてを言える人は稀でしょう。こうしたITには長所と欠点があります。長所は、ともかくマネジメントの森羅万象を次々に分解し、モデル化してそれなりに役に立つ情報を出せるようにしたこと。短所は、それによってむしろ目標達成という意味でのマネジメントへの道が遠くなったように見えることです。しかし、ITの側にはそれ以上の解は出せそうもありません。

たとえばコンテンツ管理は情報管理とも呼ばれ、昔は文書管理とも呼ばれましたが、要は必要なときに、必要な情報を、利用しやすい形で取り出せるようにするシステムのことです。それは航空機の機体整備に使うか、小売店の顧客管理に使うかによって別のものになりますが、何が違うかといえば、ほかのMSとの組合せ方、そして情報を有効にするためのロジックと管理など、ユーザーが開発し、発展させる「ほんとうのマネジメント」ということになるでしょう。ITにおけるシステムは、ユーザーの必要とするシステムの材料にはなっても、期待する「ソリューション」にはならないでしょう。


MDEは、個々のテクノロジーをモデルをもとに組合せて、マネジメントが本来の役割を発揮できるようにするためのものです。問題の発見から計画・開発・運用を含むマネジメントのエンジニアリングのライフサイクルを、多種多様なシステムのモザイク画のように見ながら改善のプロセスを的確に進めていくというイメージでしょうか。ビジネスを革新するためには、シミュレーションや実験を組み込んだ、透明性の高いプロセスが求められます。MDEは、さまざまな意味での「見える化」という新しい経営課題に答えるものでもあります。

[ MDEのコンセプト図 ]

MDE Concept