SYSTEMS ENGINEERING
もの・組織・プロセスをシステムとして最適化する複雑系工学
ソフトウェアは「ものづくり」を中心とした機械、設備システムのあらゆる側面に大きな役割を果たしています。この分野におけるソフトウェアは、ますます多くの機能を制御するようになっており、製品の性能、品質、コスト、寿命、開発期間などに影響を与えることで、製造業の経営に重大な影響を与えます。ソフトウェアのサイズ、複雑性はすでに多くの分野でエンタープライズ・アプリケーションに匹敵するものとなっていますが、工学的な開発環境の整備は大きく立ち遅れています。
モデル駆動パラダイムは、組込みソフトウェアの分野ですでに導入され始めており、設計段階でのテストとシミュレーション、プログラムの一部またはすべての自動生成が実証されることにより、そのポテンシャルが明らかになってきました。それは、統一モデリング言語(UML)の利用拡大と機を一にしています。機械、電気、建築、化学などの確立された工学と並んで、組込みソフトウェアに工学的な設計・開発・品質管理の原則が確立されることは、経営にとってのリスクの軽減にとどまらず、さらに大きな可能性を切り拓いています。それは、ハードウェア/ソフトウェアを含めた製品(システム)のモデルベースの統合によって生まれる可能性です。
欧米では、1980年代から航空・宇宙産業を中心に大規模な国家プロジェクトが継続され、その結果として巨大プロジェクトにおける航空機などの先端システム製品のシステム工学的なライフサイクル管理技術が確立されてきました。これは製品データのモデル化、製品に関わる要求のモデル化、各種表記法の整備とモデルの間の交換性の検証、ツールの開発などに基づいたもので、モデル駆動のシステム工学は完成に近づいています。これは自動車や交通システムなどにも導入され、民生技術としても展開しつつあります。モデル駆動システム工学が、幅広い製品/システムの設計と生産、管理まで普及していくとすれば、日本人としては航空・宇宙産業で起きたことが自動車や家電などでも起きることを心配しないわけにはいきません。つまり、設計と管理、マーケティングは欧米メーカーが独占し、日本は素材と部品の優秀性で認められるという構図です。
グローバルな競争の中で、日本の製造業がイニシアティブを維持拡大していくためには、モデル駆動をソフトウェアだけでなく、製品設計、生産管理、品質管理、サプライチェーン管理を含めたあらゆるシステムに広げ、全体最適を自ら実現する総合的なマネジメント環境を構築する以外にありません。中国やインドなど、レガシーを持たない国々は、新しい技術を躊躇なく導入できます。われわれは製造業におけるMDEが完成するのを見守る時間はありません。グローバルな競争環境下では、2位、3位以下の席は用意されていないことが多いからです。
ET/SEでは、リアルタイム/組込みシステムと、製品ライフサイクルを中心としたシステム工学を扱います。これらは相互に連携しており、システムへの要求のモデル化、ハードウェアを含めたアーキテクチャの設計、ハードウェアとソフトウェアの設計における統合、設計レベルの検証、ユーザーインタフェース設計、長期的なライフサイクル管理などにおけるモデル駆動技術として急速に進化しています。本誌では、「組込みシステム」だけではなく、製品設計、製品ライフサイクル管理を含むエンジニアリング技術を幅広く取り上げていきます。また、本来は不可分の関係にある「ビジネステクノロジー」との連携技術の適用などにも注意を払いたいと思います。
* RTES (Realtime/Embedded Technology System):リアルタイム/組込みシステムを表す造語。






